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【1】
今回はこのコーナー初の外国作品を取り上げましょう。
ロックバンド「クイーンのボーカリスト、フレディ・マーキュリーの半生を描いて現在大ヒット中の『ボヘミアン・ラプソディ』です。
日本の社会問題とあまり関係のない内容になるかもしれませんが、たまにはお許しください。封切りからだいぶたったのでいつものように多少ネタバレします。
クイーンというバンドについて説明の必要はないかもしれませんが、1970年代から80年代にかけて活躍した英国のバンドです。
ヒット曲は本作のタイトルにもなった「ボヘミアン・ラプソディ」をはじめ、「レディオ・ガガ」「ウィ・ウィル・ロック・ユー」「伝説のチャンピオン」など多数。
ボーカルのフレディ・マーキュリーはエイズにより1991年に世を去りました。まだ45歳の若さでした。
【2】
映画ではフレディがクイーンの前身バンドに加入し、紆余曲折の末に1985年、アフリカの飢餓救済コンサート『ライブエイド』の世界的なステージに立つまでを描きます。
その半生はまさにエピソードのてんこ盛り。
アマチュア時代、ポンコツ車を売ってデビューアルバム制作の資金をつくり、斬新なサウンドが注目されて順風満帆でスターダムにのし上がります。
金と名声を手にするものの、所属レコード会社はさらに前作以上のヒットを要求、フレディたちは「同じ手法は繰り返さない」とオペラの要素を取り入れた『ボヘミアン・ラプソディ』を製作。しかし発表当初は「ロックの定義からはずれている」などの批判を浴び、なかなか受け入れられなかったようです。
その後もクイーンは数々の作を発表、フレディもカリスマ街道をまっしぐらに爆進します。
華やかなパーティの陰の孤独、妻やボーイフレンドたちとの愛や友情、ゲイとしての迫害やメンバーとの対立、そしてもちろん興奮のライブシーン……ヒット曲にのせて怒涛のエピソードが押し寄せ、エンターティメントの底力を見せつけられます。
クライマックスを飾るのは1985年のライブエイド会場。
上空から降りてきたカメラが群衆の頭上をすり抜けてステージ上のフレディたちに接近、CGだろうと思っていてもめまいを感じるような迫力です。
大観衆を目の前で死の病におかされながら、フレディはどんな境地で歌っていたのでしょう。
ふだん洋楽を聴くときはほとんど歌詞など無視しているのですが、このステージで歌われる一連のナンバーは、まさにフレディの死を暗示するようです。嵐の海のように揺れる客席とステージ上のバンドが一体となって合唱する「ウィ・アー・ザ・チャンピオン」。もはや神の領域です。
そしてフレディはエイズと闘いながら1991年に45歳で息を引き取ります。
【3】
本作のフレディ・マーキュリーのように、これまで多くのミュージシャンの生涯が映画化されました。
ちょっと思い出すだけでも『ドアーズ』のジム・モリソン、『ラ・バンバ』のリッチー・ヴァレンス、ジェームス・ブラウンやローリングストーンズのギタリストだったブライアン・ジョーンズ、ジョイ・ディヴィジョンのボーカリスト、イアン・カーティスなど、そうそうたる顔ぶれです。
もはや世を去り、レジェンドとなった人たちばかりですが、彼らの人生はとにかくドラマティックで、まさに映画の題材向きといえます。
死者はとかく美化されやすいもの。『ボヘミアン・ラプソディ』も多少の脚色はあるでしょう。フレディ・マーキュリーの実人生というより、あくまで一篇の映画として楽しんだほうがよさそうです。
また社会問題の部分では、当時どれだけ性的マイノリティが迫害されていたかが伝わってきます。作品をとおし、フレディの選択したゲイという生きかたが、現在の人々に問われているようにも感じます。
久しぶりに映画のパワーを堪能した『ボヘミアン・ラプソディ』。オーソドックスに作られた正統派の娯楽大作、王道中の王道で、そこが大ヒットの要因かもしれません。
やはりシンプルなものが大勢の人の心を感動させるのでしょう。
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映画に見る社会 話題の映画から現代社会をウォッチング
ゴッド・セイブ・ザ・ドラッグクイーン!~映画に見る社会『ボヘミアン・ラプソディ』
written by 塩こーじ
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ロックバンド「クイーンのボーカリスト、フレディ・マーキュリーの半生を描いて現在大ヒット中の『ボヘミアン・ラプソディ』です。
日本の社会問題とあまり関係のない内容になるかもしれませんが、たまにはお許しください。封切りからだいぶたったのでいつものように多少ネタバレします。
クイーンというバンドについて説明の必要はないかもしれませんが、1970年代から80年代にかけて活躍した英国のバンドです。
ヒット曲は本作のタイトルにもなった「ボヘミアン・ラプソディ」をはじめ、「レディオ・ガガ」「ウィ・ウィル・ロック・ユー」「伝説のチャンピオン」など多数。
ボーカルのフレディ・マーキュリーはエイズにより1991年に世を去りました。まだ45歳の若さでした。
【2】
映画ではフレディがクイーンの前身バンドに加入し、紆余曲折の末に1985年、アフリカの飢餓救済コンサート『ライブエイド』の世界的なステージに立つまでを描きます。
その半生はまさにエピソードのてんこ盛り。
アマチュア時代、ポンコツ車を売ってデビューアルバム制作の資金をつくり、斬新なサウンドが注目されて順風満帆でスターダムにのし上がります。
金と名声を手にするものの、所属レコード会社はさらに前作以上のヒットを要求、フレディたちは「同じ手法は繰り返さない」とオペラの要素を取り入れた『ボヘミアン・ラプソディ』を製作。しかし発表当初は「ロックの定義からはずれている」などの批判を浴び、なかなか受け入れられなかったようです。
その後もクイーンは数々の作を発表、フレディもカリスマ街道をまっしぐらに爆進します。
華やかなパーティの陰の孤独、妻やボーイフレンドたちとの愛や友情、ゲイとしての迫害やメンバーとの対立、そしてもちろん興奮のライブシーン……ヒット曲にのせて怒涛のエピソードが押し寄せ、エンターティメントの底力を見せつけられます。
クライマックスを飾るのは1985年のライブエイド会場。
上空から降りてきたカメラが群衆の頭上をすり抜けてステージ上のフレディたちに接近、CGだろうと思っていてもめまいを感じるような迫力です。
大観衆を目の前で死の病におかされながら、フレディはどんな境地で歌っていたのでしょう。
ふだん洋楽を聴くときはほとんど歌詞など無視しているのですが、このステージで歌われる一連のナンバーは、まさにフレディの死を暗示するようです。嵐の海のように揺れる客席とステージ上のバンドが一体となって合唱する「ウィ・アー・ザ・チャンピオン」。もはや神の領域です。
そしてフレディはエイズと闘いながら1991年に45歳で息を引き取ります。
【3】
本作のフレディ・マーキュリーのように、これまで多くのミュージシャンの生涯が映画化されました。
ちょっと思い出すだけでも『ドアーズ』のジム・モリソン、『ラ・バンバ』のリッチー・ヴァレンス、ジェームス・ブラウンやローリングストーンズのギタリストだったブライアン・ジョーンズ、ジョイ・ディヴィジョンのボーカリスト、イアン・カーティスなど、そうそうたる顔ぶれです。
もはや世を去り、レジェンドとなった人たちばかりですが、彼らの人生はとにかくドラマティックで、まさに映画の題材向きといえます。
死者はとかく美化されやすいもの。『ボヘミアン・ラプソディ』も多少の脚色はあるでしょう。フレディ・マーキュリーの実人生というより、あくまで一篇の映画として楽しんだほうがよさそうです。
また社会問題の部分では、当時どれだけ性的マイノリティが迫害されていたかが伝わってきます。作品をとおし、フレディの選択したゲイという生きかたが、現在の人々に問われているようにも感じます。
久しぶりに映画のパワーを堪能した『ボヘミアン・ラプソディ』。オーソドックスに作られた正統派の娯楽大作、王道中の王道で、そこが大ヒットの要因かもしれません。
やはりシンプルなものが大勢の人の心を感動させるのでしょう。
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